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銭湯で戦闘! 鶯谷の攻防

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時は1月30日。

2月新刊の『心を洗う 断捨離と空海』の入稿を昼過ぎに終えた僕は、ひとっ風呂浴びにいつもの鶯谷の銭湯へ。

ここ、通常の銭湯の料金なんですが(430円)、「都内最大」といわれる大型銭湯。敢えて名前は出さない。

受け付けは2階にあって、そこは受付と飲食スペースになってます(ここで風呂上りにビール飲んだり食事したり)。

男風呂が3階で、女風呂が4階です。

暖簾をくぐったのが14時半ごろ。この時間だと空いててのんびりゆったり入れます。

浴槽は、熱風呂(薬風呂みたいになってて日替わり入浴剤入り)、炭酸泉風呂(ぬるくてのんびりできる)、

普通の風呂(ジェットマッサージとか電気風呂とかついてる)、そして露天風呂(マイクロバブル)、

これに加えて、水風呂とサウナ(別料金)まであります。

サウナは入らないんですが、それ以外でも2時間近くのんびりするのが僕の贅沢。

 

この日もいつものように、まずは洗髪して体洗って、炭酸泉風呂でまったりします。

で、体がゆるんできたら普通の風呂に行って、水圧のジェットで足と腰をマッサージ。

で、その後、露天風呂へ移動します。ここで、腰だけ浸かってぼ~~~っとするのが好き。

外気に触れらるので体のほてりがとれ、ず~~~といられます。

で、いつものようにぼ~~~~~としてました。

気づくと浴槽の入り口あたりでおじさん(推定年齢60歳)が背中をもたれてうつろうつろしています。

ときどきタオル(青と黄色の2枚持ち。たぶん日帰り入浴のレンタルタオル)が浴槽に落ちてしまい、

気づいたら拾い上げて、しぼって、また肩にかけたり、浴槽の淵に置いたりしてました。

あ~あ~、お湯には入ちゃってるよ、やだな~もう・・・

なんて思いながら見てました。

そんな思いをしていた人が他にもいたのでしょう・・・。

 

そのおじさんがさらにうつろうつろして、今度はけっこう体制崩して、半分横になっちゃったりして、

タオルが完全に湯船に入ってしまいました。

おじさん、寝てるので気づくはずもありません。

すると・・・。

そのおじさんの向かいに座ってあったまってた若者(推定年齢35歳)がおもむろに立ち上がり、

おじさんの方へ進んでいくと、浴槽に浸かってたタオルを掴んで、そのまま浴槽の外に叩きだしました。

その音で目覚めるおじさん。わけわからずきょどってます。

若者は何もなかったように元の場所へ戻り、おじさんをにらみつけたまま。

僕は内心、若者、グッジョブ! って思ってました。この時までは・・・。

 

おじさん、浴槽の外に投げ出されたタオルを見て状況を把握。

で、なにやらぶつぶつ言い始めました。

「なんだってんだよ・・・」みたいな、どっちかというと独り言系。

が、これに若者がキレます。

「タオルは風呂の中に入れんじゃねーよ! その年になってそんなこともわかんねーのかよ!」

みたいな感じで、最初から銭湯モード、いや、戦闘モード。

これにはおじさんのみならず僕も「え?」

いや、君の気持ちはわかる、お湯の中にタオルを入れられるのは本当に嫌だ、僕もそうだ、

君の行動は理解できる、むしろ感謝する、英雄的行いだ、

がしかし、なんで最初から戦闘モード?

で、こうなると、おじさんも後に引けなくなります。

頭が薄くなりかけた普通のおじさんなんですが、ここは下町、売られたケンカは買うのが男ってもんなんでしょうか・・・。

こちらも戦闘モードに入ってしまいました。

「なんだと!!」

カーン! ゴングが鳴りました。戦闘開始です。銭湯で戦闘、シャレにもなりません。

おじさんの反撃を受けて、若者はヒートアップ。

おじさんの行動に対する激しい非難の口撃が続きます。

ま、言ってることはもっともなんです。タオルをお湯に浸けてるおじさんが悪いんですから。

ただ、若者よ、なぜそこまで激高する?

若者の口撃を受けておじさんはやや受け身ですが、それでも一歩も引きません。

ほんと、一見、のんびりした普通のおじさんなんですがね。

まあ、平日のこの時間帯に下町の銭湯に来てるって時点で、普通のサラリーマンじゃないのかもしれませんが・・・。

 

この時、露天風呂に入っていたのはこの若者とおじさん以外に僕も含め、あと5~6人いました。

で、戦闘が始まってから、ぽつりぽつりと人が逃げ出し、気づけば、若者とその連れ、おじさんとその連れ、僕の5人だけに。

若者の連れは職場の先輩風のおじさん、おじさんの連れはお世話になってる兄(あに)さん、みたいな感じです。

連れにしてみれば、可愛がってる子分がケンカを始めたといったところでしょうか。

構図的には2対2、そして僕がオブザーバー、みたいな?

これで、2対2になってケンカが始まったらそりゃ大変なんですが、当事者以外のおじさんは戦闘モードに入ってなかったので、

まあ、大丈夫かなと思って、逃げ出すタイミングも逃しちゃったので傍観者を決めこんでました。

若者とおじさんの距離はおよそ3メートル。二人を直線でつなぎ、2等辺三角形の頂点の位置に僕がいます。

この時の僕の心情は、ドキドキ、ハラハラ、ちょっとワクワク、こんなところでしょうか。

ま、どうせ傍観者だし、みたいな関係ないモードを全身から放ちながら見てました。

で、話はタオルがお湯に入ってたか、入ってないかって話に進みます。

「タオルが湯に入ってたから出したんだろうが!」

「いや、入ってない。ちゃんと外に出してた!」

「おめえは寝てたからわかんねえだろうが!」

「いや、寝てない!」

「寝てただろ!」

こんな会話がかなり激しく続きます。

お互いの連れがふたりをなだめようとしますが、なかなか収まりません。

タオルがお湯に入ってた入ってないが焦点になっています。

と、その時、若者の連れのおじさんがまさかのアシスト。

「あんた見てただろ、タオルは入ってたか、入ってなかったか」

え? 俺?

こっちに話を振って気ました。いや、僕、参加したくないっす・・・。

4人の視線が僕に集まります。

見てないと言うこともできる・・・、しかし、それは自分にウソをつくことになる。

逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ・・・。

考えること0.5秒

「入ってましたね」

即答です。

「ほら見ろ、そう言ってるじゃねーか」

僕の発言に勝ち誇ったように言う若者の連れ。

なんか人間界の争いを見ている神のような立ち位置です。

これで収まれば僕もそれなりの役割を果たしたことになる。

が、ここで終わらないのがケンカです。

「だいたい、その口のきき方はなんだ! 若造のくせに。若造にそんなこと言われる筋合いはねえ!」

みたいな別のテーマに変更。

こうなっちゃうと収集つきません。

せっかくの僕の発言も無駄。0.5秒の逡巡が無駄。

若者の言い方に問題はある。がしかし、「若造のくせに」はこれまた問題。

思った通り、若者がこの発言でさらにキレます。

 

もうだめ。そろそろ僕も引き上げた方がいいかも・・・。

おじさんの連れ(温厚そうだがなんか訳ありな感じ)が、必死におじさんをなだめます。

が、どうにもならないので自ら出陣。

「俺は〇〇出身(〇〇には武闘派のイメージのある学校名が入ります)の○○ってもんだけど(○○には苗字が入ります)」

名乗った! 名乗りから入った! 武将か? ヤクザの出入りか?

「あんた、なんて名前?」

おじさんは若者にも名前をたずねます。次のステージに移動か、、、どうなる?

若者はこのおじさんにも敵意をむき出しにして食って掛かります。

「名前なんて言う必要ない! だいたいあなた関係ないでしょ!」

おじさんの連れ(今後は「おやっさん」と呼称)の出陣に勇気づくおじさん。

前のめりになっていきます。

それを見ておやっさんは「まあまあ、俺はここでもめ事起こせないんだよ、もうできないんだから」みたいな、

なんか思わせぶりな発言。

このあたりから若干おじさんチームが押しはじめました。

おやっさんが若者の方に近づき、事態の収拾を図ります。

第2ラウンドはおやっさん対若者です。

若者もおやっさんに対しては丁寧語を使います(声は荒げているけど)。

それを見て、おじさんも若者の方へずいずいと。

その距離、1メートル。いつ手が出てもおかしくない、まさに一触即発の状況です。

こうやって紛争って起こるんだろうなあと、戦争の歴史を思ってみたりします。

 

4人の距離(物理的な)がかなり縮まっても、若者は変わらず威勢よく吠えています。

そうしないと恐怖に自分を支えきれないかのように・・・。

敵を目の前にしてなお吠え続ける若者、それに噛み返すおじさん、そして「これ以上なんかやるとやばいんだよ俺」と謎のプッシャーをかけるおやっさん。

が、おやっさんの出陣により、若者の勢いは確実にそがれました。

そうして、吠えたまま、「じゃあもうこれ以上話しても意味がないので出ます!」と最後の啖呵を切って、ばさあ~っとお湯からあがりました。

終った・・・。

若者と連れのおじさんは無言でそのまま露天風呂から出ていき、

それを見て安心したのか、おやっさんも出ていきました。

おやっさんが出ていったあと、おじさんはしばらくいて、まだぶつぶつ独り言を言ってました。

そして、しばらくして立ち上がり、出ていこうとしました。

が、向かったのは出口ではなく、鍵のかかったベランダへの扉。

あれ? あれ? なんて言いながら、そこが出口ではないことに気づくと、恥ずかしそうに正しい出口から出ていきました。

酔っぱらってたのかもしれません。

 

ひとり露天風呂に残される僕。

訪れる静寂。

何も知らない新たな客が入ってきて、湯につかって「ふ~~~」なんて声を漏らします。

平和だ・・・。

 

お風呂はリラックスする場所です。

みんな仲良く入りましょう。

浴槽にタオルを入れるのはやめましょね。

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